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山口地方裁判所岩国支部 昭和45年(む)22号 決定 1970年5月07日

申立人 森脇政保 外三名

決  定

(申立人氏名略)

伊藤莞爾に対する公務執行妨害、昭和二四年岩国市条例第三二号違反、道路交通法違反被疑事件に関し申立人森脇政保、同宇野順二からなされた勾留理由開示請求並びに迫田富士雄に対する右同被疑事件に関し申立人久保輝雄、同柳井貞夫からなされた勾留理由開示請求につき、岩国簡易裁判所裁判官がなした右各勾留理由開示請求却下の裁判に対し、右各申立人から準抗告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件各準抗告はいずれもこれを棄却する。

理由

一、本件各準抗告申立の趣旨及び理由は別紙「準抗告申立書」(略)のとおりである。

二、よつて検討するに、勾留理由開示の制度は、憲法三四条後段の規定に基づき不当勾留からの救済を念頭に置いたものであるが、何人が右開示の請求をなし得るかについては同条はその範囲を具体的に定めず制度の趣旨に徴しても無制限に何人からも右開示の請求をなしうるとするのは手続上合理的でなくその範囲は下部関係法規に委ねているものと解せられるが、刑事訴訟法八二条によると右開示請求をなしうる者として、被告人(被疑者)、被告人(被疑者)の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹のほか「利害関係人」も含まれる旨定められている。

しかして右利害関係人の意義については解釈の分れるところであるが、当裁判所は同条の規定の態様、形式から判断して、同規定前段列挙の勾留されている本人、弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹等の身分的関係に準ずる程度の社会共同生活関係を有するため直接かつ具体的な利害関係を有する者をいうものと解する。このように解することが前記勾留理由開示制度の目的にかない、かつ手続の合理性に副う所以であると思料する。

これを本件申立について考慮するに、申立書によれば、申立人森脇政保が被疑者伊藤莞爾の所属する山口県「安保」廃棄闘争委員会の幹事であり、申立人宇野順二が右被疑者の所属する山口県日中友好協会(正統)の山口県本部幹事であり、申立人久保輝雄が、被疑者迫田富士雄の所属している徳山地区青年学生共闘会議の議長であり、申立人柳井貞夫が右被疑者の所属している政治弾圧粉砕闘争委員会の法制対策部長であることを利害関係に該当するとして記載されているけれども右各申立人は右山口県「安保」廃棄闘争委員会なり、山口県日中友好協会なり、徳山地区青年学生共闘会議なりを各代表する立場で本件申立をなしたものと解せられるところ、本件各被疑者と右闘争委員会、友好協会、共闘会議との各関係につき本件被疑者が本件勾留を受けることによつて影響される前説示の直接かつ具体的な利害関係は未だ明らかにされていないものといわねばならない。

従つて本件申立人は刑事訴訟法八二条にいわゆる利害関係人ということはできないから、これと同旨の理由をもつて勾留理由開示の各請求を却下した原裁判はいずれも相当であつて本件各準抗告はいずれも理由がないから、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項により主文のとおり決定する。

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